【漫画レビュー】人類史上2番目に命を奪った死刑執行人の話『イノサン』
どもども、ふくてんです。
僕はゲームも大好きですが、漫画も大好きで週に1度は漫画喫茶に行っています。
今回は最近読んだ漫画の中で"最も世界観に引き込まれた漫画"を紹介したいと思います。
あらすじ
フランス革命時代に貴族や民衆などを魅了した死刑執行人のカリスマ「シャルル・アンリ・サンソン」の実話をもとにして作られた漫画です。
舞台は18世紀のパリ。
ルイ16世やマリーアントワネットなど世に名高い歴史人物たちが名を馳せた時代。
華やかな生活を送っている貴族
食料供給不足により貧しい生活を送る庶民
そんな混沌とした大革命時代を裏で支える歴史の立役者、処刑人一族「サンソン家」
主人公のシャルル=アンリ・サンソンは処刑人一族の第四代目当主として生まれる。
当時の死刑執行人は、国王から直々に任命される「正義の番人」
しかし、当時はあまりにも残忍な処刑法が横行しており、その残虐性からサンソン家は世間から「死神」と蔑まれる。
「死刑執行人」は国王から賜る名誉ある職業でありながらも、民衆からは忌み嫌われるという"矛盾”を抱えた職業であった。
その煽りを受けてか、主人公のシャルル・アンリは幼少の頃から学校にもろくに通えず、人々から疫病神扱いをされて生きる。
出典:集英社
シャルル・アンリはサンソン家に生まれた自らの運命を呪い、処刑人となる事を拒むが、やがてやってくる当主継承に苦悩する。
しかし、彼はこの世から「死刑をなくす」為に自ら4代目当主となることを決意する。
みどころ
この漫画の見どころはズバリ
「卓越した描写力」と「没入感のある物語」です。
「死刑執行人」をテーマとしているだけあって、拷問や処刑のシーンが細部まで描かれており、思わず目を背けたくなる程の痛々しい描写も…。
ただ、あまりにも美しい描写の為、グロいだけでなく、1コマ1コマがまるで美術館に飾ってある絵画のようで見惚れてしまう程です。
人体内部の細部の構造まで追求するほどのデッサン力がある為、胴体から落ちる頭の重みすら感じられるような説得力があります。
また、画力の凄みもさることながら、
主人公に感情移入させるほどの没入感のある物語が「イノサン」の最大の魅力です。
死刑執行人の一族の次期当主として生まれながらも「人を殺すために生まれたんじゃない」と自分の運命に葛藤する主人公のシャルル・アンリ。
いずれは死刑執行人として生きなければならない運命の中でもがき、
苦悩する主人公の心理描写が緻密に描かれており、
非日常ながらも感情移入してしまうほどの没入感がありました。
当時は大衆娯楽だった「死刑執行」
見世物として非日常的な「残虐な死」に酔いしれる民衆
その光景を眺めて高揚する貴族
それらの混沌とした狂気を一挙に背負い、正義の剣を振り下ろす処刑人
「イノサン」は大衆娯楽として人を殺す事をなんとも思わない野蛮な処刑が横行する
強大な歴史の中で、もがき苦しみながらも必死に生きようとした死刑執行人の話です。
現代社会だとありえない非日常が当たり前のようにそこにはあり、人間という生き物の中に潜む「狂気」と「獣性」の臭気が立ち込めてきそうな世界でした。
しかし、「狂った非日常だからこそ、その闇を覗いてみたい」
という読者の背徳感こそが人間の中に潜む「獣性」なのかもしれません。